



豊浦地区で民宿吉田平次郎を営んでおります、吉田邦臣と申します。創業者の祖母が約50年前に始めた民宿で、母、私と継承し、私で3代目となります。
民宿吉田平次郎のあるここ明日香村は、約1400年前に日本の最初の首都が100年ほど置かれていた土地です。

明日香村という地名を知らない方でも、飛鳥時代の「聖徳太子」や「大化の改新」という名前は耳にされたことがあるかと思います。それらの舞台となったのが、明日香村です。

現在の日本の律令国家体制の礎が築かれたことから、「日本の始まりの地」とも呼ばれ、今も地中には、当時の歴史遺産が数多く眠っています。

にもかかわらず、高度経済成長時代の流れとともに、この村にも無秩序な宅地開発が迫っていましたが、この貴重な歴史遺産を保全するために、昭和55年5月、「明日香村における歴史的風土保全及び生活環境の整備等に関する特別措置法」通称「明日香法」が公布、施行されました。この法律により、村全域の景観が守られ、昔と変わらない自然豊かなままの姿を残しております。

私は、山口の大学で福祉を学び、その後紆余曲折を経たのちに勤めていた福祉の仕事をやめ、民宿を継承することになりました。そのきっかけとなった大きな要因が、大きく2つあります。
1つ目は、母が高齢となり、廃業の相談を受けた時に寂しく思ったことでした。私が幼い頃から、多くのお客様が当民宿に宿泊され、普段から見知らぬ人が家にいて、楽しそうに時間を過ごしておられるのを、子どもながらに鮮明に覚えており、その様な場所がこの村から一軒なくなってしまうのを寂しく思いました。
そして、2つ目は、私の高校時代からの「子どもと関わる仕事に就きたい」という夢が実現できるかもしれないと思ったからでした。母の代に、民宿をやりながら「大和飛鳥ニューツーリズム」が主催する教育民泊の受け入れも行っており、国内外を問わず多くの学生が宿泊していたので、子どもと関われるのは容易に想像がつきました。
この2つが私の気持ちを後押しし、民宿を継承したのが約8年前になります。

始めた当初は、お客様に提供する料理の勉強から始まり、母から民宿のいろはを教えてもらい、手探りの中、来てくださったお客様に喜んでいただける様に、精一杯の努力をしておりました。教育民泊の生徒の受け入れを通じ、数えきれないほどの子どもたちと関わることもでき、慣れない仕事で大変な中でも、お客様の笑顔に力をいただきながら、充実した毎日を送っていました。
世界中の人々の生活が一変した、あの時までは。
そうです、新型コロナウイルスの流行です。日本政府による緊急事態宣言などにより、当民宿をご利用のお客様の数も前年比98%減となりました。観光業・宿泊業は特に大打撃を受け、当民宿も存続の危機を感じておりました。毎日流れてくる、一向に収束に向かわないコロナ禍のニュースを見ながら、先の見えない真っ暗なトンネルの中を毎日進んでいるようでした。
それがある日、先が見えない日常に、一筋の光が差し込みました。とある旅行会社様より、「場所に行く」のではなく、「人に会いに行く」という新しい旅行の形を明日香村でも始めたいと、声をかけていただいたのです。
最初にも書いた様に、この村には貴重な歴史的遺産が全国的に見ても数多くあります。そんな「場所」に来るのが目的でなく、民宿を営んでいる「私」に会いに来るのが目的の旅行といわれても、正直なところ、この村の魅力に勝るものが私個人にあるわけがないと思っていました。
しかし、「子ども」に対する熱い気持ちには自信がある私は、子どもの自然体験に特化した、ご家族様向けプランを思いついたのです。都会では絶対にできない、自然の中での体験。しかも、ただ楽しいだけでなく、体験の中から自発的に学び、積極的に行動できる内容にしようと考えました。
そしてたどり着いたのが、完全オーダーメイドプランです。こちらのやりやすいように、事前にあれこれプランを決めるのではなく、ご予約をいただいた際に、お子様の性別や年齢、性格、興味のあることなどを徹底的にヒアリングさせていただき、その季節にできる体験をご提案させていただきます。また、お子様自身が希望される体験内容も、プランに組み込みます。
当日は、ご予約の際に決定したプラン内容を軸に、お子様の興味のあることに時間を使わせていただきます。私はインストラクターの立場でありますが、答えはこちらからは言わず、ヒントだけを提示し、子どもたちに自ら考えてもらい、答えに辿り着いてもらう様に声掛けをしております。







竹の切り方や野菜の収穫の仕方、生き物の捕まえ方など、教えてもらった答えではなくヒントから考え自分で辿り着いた答えなので、リピーター様のお子様は以前に学んだことは忘れずにきちんと覚えておられます。


今では、民宿のお客様の数よりも自然体験プランをご希望のご家族様が増えました。

今後の私の目標は、人に会いに行く旅行の形を通じて私に会いに来てくださったお客様に、私の生まれ育ったこの明日香村の魅力をお伝えし、興味を持っていただき、より一層村の観光が発展するようお手伝いすることです。

サマバケでも、それ以外でも。自然体験を通じて、皆様にお会いできる日を楽しみにしております。
▼この寄稿者が開催している体験プログラムはこちらhttp://samabake-asuka.com/program/880/ 明日香村の自然の中でやりたいことをやってみよう!!(宿泊付き)
